不登校の子どもがいる家庭の住まいの工夫|家族みんなが安心できる居場所と家具配置

子どもが学校へ行かなくなったとき、まず心配になるのは、子どもの気持ちや学校との関係ではないでしょうか。
「明日から学校に行く」「来週から学校に行く」「再来週から学校に行く」
でも、それはいつになるかわかりません。
そこで、その日が来るまで考えてみてほしいことがあります。
それは、「これから家でどう過ごすか」ということです。
学校へ行っていたころは、平日の昼間、子どもは学校にいました。
ところが不登校になると、自宅で過ごす時間が一気に長くなります。
すると、それまで問題なく使えていた子ども部屋やリビングでも、
「ずっと自分の部屋にこもっている」
「リビングにいると親子がお互いに気を使ってしまう」
「きょうだいが落ち着かない」
「親も一人になれる場所がない」
といった、これまでになかった住まいの問題が出てくることがあります。
不登校の原因はさまざまであり、もちろん、間取りや家具配置が不登校を引き起こすわけではありません。
しかし、家で過ごす時間が長くなったとき、住まいを少し整えることで、子ども本人だけでなく家族の負担を軽くできることはあります。
一級建築士として、今回は「不登校の子どもがいる家庭の住まい」について考えてみたいと思います。
不登校になると、家の役割も変わる
住まいは、家族の暮らしに合わせて使い方を変えていくものです。
子どもが小さいころと中学生になったころでは、必要な部屋も家具も違います。
同じように、子どもが学校へ行かず、自宅で過ごす時間が長くなれば、家に求められる役割も変わります。
たとえば、それまで子ども部屋は、
- 夜に寝る
- 宿題をする
- 自分の物を置く
といった場所だったかもしれません。
ところが一日の多くを自宅で過ごすようになると、その一室だけで、
「寝る」
「休む」
「遊ぶ」
「勉強する」
「動画を見る」
「一人になる」
という多くのことをするようになります。
だからこそ、一度、今の暮らしに住まいが合っているかを見直してみてもよいのです。
「個室があるから大丈夫」とは限らない
不登校の子どもにとって、自分の部屋はとても大切な場所になることがあります。
誰にも気を使わず、一人になれる場所が必要な時期もあるでしょう。
ですから、私は「個室にこもらせないほうがいい」とは考えていません。
大切なのは、むしろ逆です。
安心して一人になれる個室を確保したうえで、個室以外にも過ごせる場所があること。
家の中に、
「自分の部屋にいる」
か、
「家族とリビングで過ごす」
という二つの選択肢しかないと、本人にとってどちらも苦しくなることがあります。
そこで考えたいのが、家の中の「第三の居場所:サードプレイス」です。
個室とリビングの間に「第三の居場所」をつくる
第三の居場所といっても、新しい部屋をつくる必要はありません。
たとえば、
リビングの窓際に小さな椅子を置く。
ダイニングから少し離れたところにデスクを置く。
ソファの向きを変えて、家族と視線が直接ぶつからない一角をつくる。
廊下やホールの一部に小さな居場所をつくる。
この程度でも十分です。
ポイントは、
「家族の気配は感じるけれど、ずっと家族と向き合わなくてよい」
という距離です。
同じリビングにいても、全員が同じテレビを見て、同じ方向を向いて、会話をし続ける必要はありません。
子どもは本を読んでいる。
母親は仕事をしている。
父親はテレビを見ている。
きょうだいは宿題をしている。
それぞれ違うことをしながら、なんとなく同じ空間にいる。
そんな過ごし方ができる家具配置もあります。
「家族の視線」がぶつかりすぎない家具配置にする
家具配置を考えるとき、私は動線だけでなく、人と人との視線も大切だと考えています。
たとえば、子どもがリビングで過ごす場所の真正面に、親がいつも座っている。
親がキッチンに立つたびに、子どもの様子がすべて見える。
そんな配置では、親にそのつもりがなくても、子どもは「ずっと見られている」と感じることがあるかもしれません。
反対に、親からまったく見えない場所しかなければ、親のほうが心配になってしまうこともあります。
そこで、
見ようと思えば様子が分かるけれど、普段は視線がぶつからない。
そんな位置関係を考えてみます。
ソファや椅子の向きを少し変えるだけでも、人と人との距離感は変わります。
不登校の子どもだけでなく、きょうだいの居場所も考える
ここは、とても大切だと思います。
家族の中に不登校の子どもがいると、どうしてもその子を中心に暮らしを考えがちです。
けれど、同じ家にはきょうだいも暮らしています。
たとえば兄弟で同じ子ども部屋を使っている場合。
一人が一日中部屋にいるようになれば、もう一人は以前と同じようには部屋を使えなくなるかもしれません。
学校から帰ってきても、
「部屋に入りにくい」
「友達を呼べない」
「勉強する場所がない」
と感じることもあるでしょう。
これは誰が悪いという問題ではありません。
家族の暮らし方が変わったのですから、部屋の使い方も変えてよいのです。
たとえば一時的に学習スペースをリビングに移す。
寝る場所と勉強する場所を分ける。
兄弟それぞれが一人になれる時間をつくる。
家具を使って緩やかに空間を分ける。
「二人の子どもは同じ子ども部屋」という従来の部屋割りにこだわらず、今の暮らしに合わせて考え直してみてもよいでしょう。
親にも「一人になれる場所」が必要です
子どもが家で過ごす時間が長くなると、保護者も緊張が続くことがあります。
「今日はどうだろう」
「声をかけたほうがいいのかな」
「放っておいたほうがいいのかな」
同じ家にいるからこそ、気になってしまいます。
だからこそ、私は親の居場所も大切にしてほしいと思います。
子どものためにリビング全体を譲ってしまう必要はありません。
親にも落ち着いて仕事をする場所、テレビを見る場所、本を読む場所、少し一人になれる場所があってよいのです。
家族が長時間一緒にいるときほど、
「仲良く一緒にいるための工夫」だけでなく、「無理なく離れられる工夫」も住まいには必要です。
家族との距離は「近いほどよい」とは限らない
住まいを考えるとき、
「家族が自然に顔を合わせる間取り」
「家族のコミュニケーションが増えるリビング」
などが良いものとして語られることがあります。
もちろん、それが心地よい家庭もあります。
しかし、いつでも家族が近くにいることが、すべての人に心地よいとは限りません。
一人になりたいときには一人になれる。
誰かと一緒にいたいときにはリビングへ行ける。
話したくない日は、話さなくても同じ場所にいられる。
その日の気持ちに合わせて「家の中で居場所を選べること」も、住まいの大切な役割なのではないでしょうか。
勉強する場所は「子ども部屋」でなくてもいい
学校へ行けなくなったとき、
「せめて家では勉強してほしい」
と思う保護者もいるでしょう。
けれど、子ども部屋が「休む場所」「逃げられる場所」になっている場合、そこに勉強まで持ち込むことが本人に合わないこともあります。
そんなときは、勉強する場所を別につくる方法もあります。
ダイニングテーブルでもいい。
リビングの小さなデスクでもいい。
窓際のカウンターでもいい。
毎日そこで勉強しなくても構いません。
「やってみようかな」と思ったときに使える場所がある。
まずはそれくらいでもよいのではないでしょうか。
不登校を「治すため」の家具配置ではありません
最後に、ここは誤解のないようにお伝えしておきたいと思います。
住まいを変えれば、不登校が解決するわけではありません。
不登校には、学校生活、人間関係、学習、心身の状態など、さまざまな背景があります。
必要に応じて、学校、医療機関、スクールカウンセラー、教育支援センターなど、専門家につながることも大切です。
住まいにできることは、その代わりではありません。
私が建築士として考えているのは、
学校へ行けない時間も、その子の人生の一部であるなら、その時間を過ごす「家」を少しでも安心できる場所にできないだろうか。
ということです。
そして、それは本人だけの問題でもありません。
一緒に暮らす親も、兄弟姉妹も、それぞれが無理をしすぎず暮らせること。
そのために、
個室をどう使うか。
個室以外にどんな居場所をつくるか。
家族との距離をどう取るか。
家具をどの向きに置くか。
部屋の役割をどう変えるか。
住まいから考えられることは、意外にたくさんあります。
不登校などで自宅で過ごす時間が長くなったお子さまの住環境について
COLLINO一級建築士事務所では、社会活動の一環として、病気や障害、不登校などによって自宅で過ごす時間が長くなった子どもと、そのご家族の住環境について考える活動を行っています。
「子どもが自室からほとんど出なくなった」
「兄弟姉妹との部屋の使い方に困っている」
「家族がお互いに疲れない距離をつくりたい」
「今ある家具を使って、家の中に別の居場所をつくれないだろうか」
そんな住まいのお悩みがあれば、家具配置や部屋の使い方という視点から一緒に考えていきます。ンが欠かせません。新しい働き方と家族関係を両立させるために、一歩ずつ改善を図ってみてはいかがでしょうか。
