築30年のマンションが“学びの城”に――共働き家庭のリノベ成功ストーリー
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都心の中古マンションをリノベーションして、家族の暮らしを理想のかたちに変える――。
そんなライフスタイルを選ぶ子育て家庭が、いま増えています。
本記事では、築30年のマンションを「子どもが学び育つ空間=学びの城」へと生まれ変わらせた、ある共働き家庭の実例をご紹介します。
教育建築士として携わったからこそ見えた、“家が子どもの成長に与える力”とは何か。
家族の選択とリノベの工夫から、そのヒントを探っていきましょう。
■ 中古マンション購入のきっかけは「学区」と「駅近」
都内で忙しく働く共働き夫婦のAさん一家。小学生になるお子さんの進学を機に、それまでの賃貸住宅から「学区」と「通塾の利便性」を重視して住まいの購入を検討し始めました。
ところが、築浅で希望エリアとなると、100㎡近いファミリーマンションは非常に高額。
そんな中で出会ったのが、築30年・70㎡の中古マンション。
駅から徒歩3分、教育環境にも恵まれた立地で、「リノベーションすれば可能性はある」と決断されました。
■ 教育建築士として提案したのは「暮らしを学びでつなぐ動線設計」
ご家族が大切にしたのは、単に「新しくする」ことではなく、学習習慣が自然に身につく暮らしをつくることでした。
教育建築士として、私が提案したポイントは以下の3つです。
① 家に帰ってすぐ「学びモード」に入れる“ただいま導線”
リビングにはランドセル・上着・教科書類を収納できる“専用収納”を設置。
帰宅した子どもが自然と荷物を整理し、リビング学習に移行できるよう、「帰宅→学習」までの動線を一本化しました。
② リビング学習スペースは“抜け感”と“半個室感”のバランスで
リビングの一角に壁付けのカウンターと本棚を造作。
照明は手元だけをやさしく照らす間接照明にし、視界の抜けを意識しながらも、集中しやすい「こもり感」を確保しました。
親がキッチンにいても目が合う距離感を大切にし、“見守られながらも自立できる”設計にしています。
③ エアコンや換気も大切
勉強に集中できるように自宅学習の効率を上げるには、目には見えない学習環境を整えることが第一条件。椅子やデスクはもちろん、エアコンからの風や、温度湿度の調整、照明の調整などを行いました。
■ “家のつくり”が子どもの行動を変える
引っ越しから半年。
Aさんのご家庭では、毎日決まった時間に子どもがリビングで学習し、終わったら自分で片付けてから夕食を手伝う、という「暮らしのリズム」が定着しました。
以前はダイニングテーブルの上が常に散らかっていたそうですが、収納の位置と動線を見直したことで、自分で管理する意識が芽生えたとのこと。
また、子どもが「宿題をしたあと、自分から読書をするようになった」との声もあり、空間の工夫が“学びへの意欲”を引き出している実感があります。
■ リノベーションは「教育の土壌」を耕す機会
リノベーションというと「おしゃれにしたい」「設備を最新にしたい」といった見た目の刷新に目が行きがちですが、本質はそこではありません。
家族の暮らし方、子どもの成長、学びの習慣をどう空間で支えるか――それこそが教育建築士の視点です。
今回のAさんのように、立地に加えてリノベで“学びやすさ”を設計すれば、築30年のマンションでも、子どもの未来に投資できる価値ある住まいへと生まれ変わるのです。
■ まとめ|学びの城は、つくることができる
都心では新築・大型物件を手に入れることが難しくても、今ある空間をどう活かすかで教育環境は大きく変わります。
子どもが安心して学べる場所、家族が知的に過ごせる空間は、築年数ではなく「設計の工夫」でつくることができるのです。
「学力を伸ばしたい」
「忙しいけれど、学びに集中できる家にしたい」
そんな願いを持つご家庭にとって、リノベーションは“未来を変える手段”となり得ます。
教育建築士として、これからも「学びのある暮らし」を空間から支える住まいを提案していきたいと思っております。